2015年、インドのとある滝壺で、国境について考えた。

僕は、滝壺の真ん中にひょっこりと姿を出した岩場に寝転んで、ぼんやりと時を過ごしていた。 すぐ右には、インド人青年ヴァンが、その背の高い体を窮屈そうに丸めながら、隣の岩の上に寝転がっている。 遥か上の方から滝として流れ落ちてきた水は、僕がいる…

神様の上の神様

イランで出会った一人の青年のことを、最近思い出している。2016年夏。イラン中部の街、ヤズドの広場。 15世紀に造られたこの広場のベンチで、彼は僕の目をまっすぐに見つめて、英語でこう問いかけてきた。「世界から戦争をなくすには、どうすればいいと思う…

引き算を生きる、ということ

いまからちょうど一年前、去年の9月の終わりに、父方の祖父が他界した。 親戚の死を体験するのは、10歳の時に母方の曾祖母が亡くなったとき以来だった。 その時は、母の故郷の親戚から突然「ひいおばあちゃんが倒れた」と連絡があって、駆け付けた時にはもう…